パリのモンパルナス駅からTGV(フランスの高速鉄道)で約2時間15分。フランス北西部のブルターニュ半島の根元に位置するナント市は、フランス国内で最も長いロワール川が大西洋に流れ込む場所に開けた港町です。ロワール地方最大でありながら、面積の6分の1を緑地と公園が占める緑豊かな都市です。 ナントは1532年にブルターニュ公国がフランスに併合されるまではブルターニュ公国の首都としても栄え、15世紀には河口という立地条件から、貿易港としても栄えました。フランス第一の貿易港となった結果、砂糖や香料などを西インド諸島から輸入する倉庫、加工する工場群、造船所、船会社や大船主の邸宅などが建てられました。現在では街の中心部にあった水路の代わりに広々とした道路がつくられ、開放的な近代都市となり、タイム誌の「ヨーロッパで最も住みやすい都市」(2004年)にも選ばれています。
ナントは元々ブルターニュ公国の首都として栄えた都市。ブルターニュは三方向を海に囲まれ、別名「海の国」と呼ばれる海岸部と、ケルト文化の面影が残る内陸の「森の国」とからなる半島です。ブルターニュの名物といえば、海に囲まれた土地柄から、豊富な海の幸(牡蠣、ほたて、オマール海老)などと、小麦が育たないやせた土地だったため食べられていたソバ粉のクレープ(ガレット)。そして南海岸に広がる塩田でつくられた塩と、それを使った有塩バターなど。また、日照時間が少なくブドウが育たないため、リンゴを使った発泡酒シードルがよく飲まれます。コーヒーカップのような器で飲むのがブルターニュ流。 ドゴール大統領の時代に、ナントはロワール地方に分類され、ペイ・ド・ラ・ロワール地域圏の首府かつロワール=アトランティック県の県庁所在地となりました。ロワール川流域にはブドウ畑が広がり、ワインの産地でもあります。軽くてさっぱりとした辛口の白ワイン、ミュスカデはロワール川河口付近でつくられます。また、肥沃な平野からは農産物や乳製品、ジビエ(鹿やイノシシなど)、川魚、海の魚介類など豊かな食材に恵まれています。
ナント市のシンボル的存在の古城。13世紀の城の遺構の上に、ナントの黄金期だった15世紀にフランソワ2世が改築を行い6つの丸い塔を持つ要塞のような外観が作り上げられた。内部は外観とは対照的な白い壁が印象的なブルターニュ公国の宮殿。広場では頻繁に祝宴や馬上槍試合が催されていたという。1598年、プロテスタント教徒にもカトリック教徒と同様の権利を与え、信仰の自由を保証する「ナントの勅令」がここで布告された。現在では、ナント歴史博物館がある。
4世紀に創建され、1434年から450年かかって、ゴシック様式の大聖堂として完成した大聖堂。フランス革命、第二次世界大戦、1972年の大火でほぼ全壊という悲劇に見舞われたが、1985年に再建されている。
『海底二万里』、『十五少年漂流記』(『二年間の休暇』)、『80日間世界一周』などで知られるSF小説家ジュール・ベルヌの故郷ナントにつくられた博物館。生誕150年を記念して1978年に開館。ヴェルヌの自筆の原稿、初版本、写真、手紙、使用していた文具などが展示されている。
1995年にナントで始まったクラシック音楽祭。毎年テーマが設定されて、9つの会場では約45分で低価格(700円から3000円程度)のコンサートが朝から晩まで繰り広げられる。その数、5日間で300公演! 2013年は2月に「ロシアの祭典」と題して、ロシア音楽を特集して開催された。2014年は1月29日から2月2日まで20世紀のアメリカ音楽をテーマに開催される。 2005年には日本にも上陸、今年は5月3日から5日まで「パリ、至福の時」と題して東京・丸の内エリアで開催された。