紀元 79年、火山の噴火によって忽然と消えた古代都市ポンペイ。18世紀に発掘が始まると、人々はこの「奇跡の街」に衝撃を受けました。数メートルにも及ぶ火山灰の下に眠っていた古代ローマ人の暮らしが、整然と区画された街並みとともに、突如、姿を現したのです。「古代を封印したタイムカプセル」とも呼ばれるポンペイの発掘品の中でも、とりわけ人々を魅了したのが、美しい壁画の数々でした。表情豊かな神々や心休まる自然の風景、愛らしい動物たち。室内の壁に直接描かれた色鮮やかな絵画が、私たちに、古代ローマ人の楽しみや美意識を直接に語りかけてきます。
このたびの展覧会では、ポンペイ壁画コレクションの双璧であるナポリ国立考古学博物館とポンペイ監督局の貴重な作品の中から、ローマ帝国の繁栄と人々の豊かな生活を伝える壁画50点を厳選し、その魅力を紹介します。2000年の時を越えて輝きを放つ古代ローマの美を心ゆくまでご堪能ください。
地中海に面した風光明媚な南イタリアの小都市、ポンペイ。豊かな土壌と自然の良港に恵まれたこの街では、農園経営や貿易で富を築いた人々が、邸宅をお気に入りの壁画で飾り立てていました。しかし、繁栄の絶頂を迎えようとしていたまさにその時、ポンペイは歴史から忽然と姿を消したのです。
天地を揺るがす轟音とともに、街に熱風が吹き荒れました。突然の天変地異に慄く人々。その眼に映ったのは、巨大な火柱を吹きあげるヴェスヴィオ山の姿でした。噴石が雨のように降り注ぎ、真昼の街は瞬く間に闇に閉ざされました。火山灰が眼を覆い、肺を塞いでいきます。そして逃げ惑う人々を、火砕流が容赦なく飲み込んでいきました。やがて山の麓に広がる美しいブドウ畑やオリーブの樹林も火山灰に埋もれ、ポンペイは永い眠りについたのです。時が経つにつれて、滅びた古代都市は人々の記憶から消えていき、やがて「ポンペイ」という街の名前も忘れられてしまいました。かつてポンペイがあった場所はいつの間にか「チヴィタ(街)」と呼ばれるようになります。しかし人々はその意味するところを知りませんでした。人類の歴史から消えたポンペイ。その街並みが再び地中海の陽光を浴びたのは、ヴェスヴィオ山の噴火から、実に1700年後のことでした。
2017年1月21日(土)〜3月26日(日) 山口県立美術館
[開館時間]9:00〜17:00(入館は16:30まで)
[休館日]月曜日※ただし2月6日・3月6日(ファーストマンデー)、3月20日(月・祝)は開館
[観覧料]一般 1,300(1,100)円/シニア・学生 1,100(900)円/18歳以下無料
◎コレクション展セット券〈当日券のみ〉 一般 1,400(1,200)円/学生 1,200(1,000)円