およそ2000年前に描かれた古代ローマ時代の壁画をご紹介する本展覧会。山口では初となるポンペイの壁画展の構成と展示の見どころをご紹介します。
ポンペイの邸宅や別荘の部屋を彩っていた巨大な壁画。遠近法を駆使した空間表現は、2000年前の絵画とはとても思えません。細部の繊細な表現も見事で、古代ローマ人の卓越した美意識を感じさせます。
《黄色いアエディクラのある建築》(部分) 後1世紀第3四半期 ボスコレアーレ、考古遺物収蔵庫蔵 © ARCHIVIO DELL’ARTE - Luciano Pedicini / fotografo
《詩人のタブロー画がある壁画断片》(部分) 後1世紀初頭 ポンペイ、考古遺物収蔵庫蔵
© ARCHIVIO DELL’ARTE - Luciano Pedicini / fotografo
第2章 ポンペイの日常
古代ローマでは、生活のあらゆる場面に壁画が浸透していました。台所の棚に並ぶ食器や食材、中庭でさえずる小鳥、また商店の看板から選挙ポスターまで、ポンペイの壁画には、古代ローマ人の日常生活が生き生きと映し出されています。
ポンペイの壁画には、ギリシャ神話の登場人物がしばしば描かれています。古代ローマ人にとって、ギリシャ文化は憧れの的。そして富裕層にとっては必須の教養でした。逞しい英雄や美しい神々が彩る壁画は、それ自体が主人の高い文化的洗練度を示すものだったのです。
《ナルキッソス》 後62–79年 ボスコレアーレ、考古遺物収蔵庫蔵
© ARCHIVIO DELL’ARTE - Luciano Pedicini / fotografo
《アレクサンドロス大王とスタテイラ》 後1世紀後半 ポンペイ、考古遺物収蔵庫蔵
© ARCHIVIO DELL’ARTE - Luciano Pedicini / fotografo
30万の神がいた、ともいわれる古代ローマ。ポンペイの壁画にも、町の守護神ウェヌスや、酒神ディオニュソスなど、さまざまな神が描かれています。展覧会の最後は、神々をテーマにした作品をとおして、2000年前の人々が神の姿に込めた思いをたどります。