古くは古代ローマ時代にまでさかのぼる歴史を持つランス。496年、この街でクローヴィス1世が大司教聖レミギウスによって洗礼を受け、カトリックに改宗しました。この故事に倣い、ランスは歴代のフランス王が戴冠式を行う「王の街」となったのです。王たちの戴冠式の舞台となったランス大聖堂は、美しいステンドグラスや微笑の天使の彫刻でも知られる、代表的な聖堂の一つ。1991年には世界遺産に指定されました。またランスと言えばシャンパン醸造の本場。ポメリー、G.H.マムなど、市内には多数のシャンパン・メゾンが存在します。カーヴと呼ばれる貯蔵庫などを見学するツアーもあり、日本からも多数の観光客が訪れています。
平和の聖母礼拝堂壁画のための下絵素描群展示風景
おかっぱ頭に丸メガネの独特な風貌で知られる画家、藤田嗣治(1886–1968)。エコール・ド・パリと呼ばれる、ピカソやシャガールらが活躍した20世紀初頭のパリで、乳白色の肌をした裸婦像によって一躍時代の寵児となりました。第二次世界大戦後は日本画壇と決別。渡仏してフランス国籍を取得します。G.H.マム社会長ルネ・ラルーと知り合い、1959年、彼を代父としてランス大聖堂でカトリックの洗礼を受けました。洗礼名はレオナール・フランソワ・ルネ。こうして藤田は、ランスで「レオナール・フジタ」となったのです。フジタが50年代初頭より温めていた礼拝堂建設の構想についても、ルネ・ラルーの援助により同社敷地内に実現しました。現在フジタが君代夫人とともに眠るこの平和の聖母礼拝堂、通称「フジタ礼拝堂」内部に描かれたフレスコ画は、画家晩年の集大成と言える傑作です。本展では、フジタ礼拝堂壁画のための下絵素描の数々もご覧いただけます。