萩市在住の写真家、下瀬信雄(1944–)は、東京綜合写真専門学校で写真を学び、
帰郷して家業の写真館を継いでからは、ふるさとの文化や風土を独自の視点で撮るスタンスを貫いてきました。
萩の街並みや風景をとらえた最初の写真集『萩 HAGI』(1989年)は、
私的な視点から街の佇まいをみつめる感性が評価され日本写真協会新人賞を受賞。
萩を題材とするシリーズは、さらに6×6センチ判の中判カメラで自然や風景をとらえた「凪のとき」、
35ミリフィルムを用いた小型カメラによるスナップショットを集めた「風の中の日々」のシリーズへと展開していき、
次作『萩の日々』(1998年)に結実しました。
また90年代初めごろからは、4×5インチの大判カメラを用いたモノクローム撮影で自然界の中に潜む境界にせまる、
「結界」をテーマとするシリーズにも取り組み始めました。このシリーズから編まれた写真集『結界』(2014年)は、
第34回土門拳賞を受賞、下瀬信雄のライフワークとなっています。
本展覧会では、「結界」シリーズを中心に、初期の作品から近年のカラー写真まで、
写真家・下瀬信雄のこれまでの歩みをたどります。
下瀬 信雄 (しもせ のぶお)
満州新京市出身。1945年、萩市に引き揚げ。1967年、東京綜合写真専門学校を卒業後、萩に帰る。
以後萩を拠点に活動、ニコンサロンなどで多数個展を開催してきた。
現在までに写真集『萩 HAGI』(1989年)、『萩の日々』(1998年)、『結界』(2014年)を出版。
IBA(インターナショナル・ブロードキャスティング・アワード)非英語圏部門最優秀賞(2005年)、
第30回伊奈信男賞(2005年)、第63回山口県美術展覧会大賞(2009年)、
第34回土門拳賞受賞(2015年)など受賞歴多数。