出品作家の紹介

竹久夢二(1884-1934)

大正・昭和期を代表する挿絵画家です。大正3年に開店した「港屋」という店で夢二の手がけた版画や便箋、封筒、帯、半襟などの夢二グッズを売り出すと、たちまち大評判となりました。

《港屋絵草紙店》木版画 大正3年
絵の右に夢二、真ん中に元の妻の岸多万喜、左が新しい恋人となった笠井彦乃だといわれています。

《港屋絵草紙店》

高畠華宵(1888-1966)

竹久夢二のライバル的存在でした。華宵の描く独特の美少年や美少女は人気を呼び、彼の挿絵の有無が雑誌の売れ行きを大きく左右したといわれています。

《南国の唄『少女画報』5月号の口絵》
原画

竪琴を弾くギリシア風の衣装を身につけた少女の姿は、遠いヨーロッパへの憧れをかきたてたことでしょう。

《南国の唄『少女画報』5月号の口絵》

蕗谷虹児(1898-1979)

雑誌『令女界』の表紙などを担当した人気挿絵画家でしたが、渡仏してサロン・ドートンヌ入選を果たすなどの活躍もしました。

《お留守居 『令女界』の表紙》
原画 大正11年

和服姿の少女、十字架をつけた西洋人の絵。西洋文化が家庭のなかに浸透してゆく当時の文化的状況をうかがい知ることができます。

《お留守居『令女界』の表紙》

中原淳一(1913-1983)

雑誌『少女の友』の表紙や挿絵を描き、戦前から人気の高かった画家です。昭和21年には女性誌『それいゆ』を創刊。戦後の混乱期に、夢と希望を与える雑誌として広く受け入れられました。

《『それいゆ』の表紙》雑誌 昭和29年
これからの新時代にふさわしい理知的で活動的な女性イメージが表現されています。

《『それいゆ』の表紙》

松本かつぢ(1904-1986)

中原淳一のライバルと目された挿絵画家です。淳一と同じ頃(昭和6、7年頃)デビューを果たしています。

《みずうみのほとり》
原画 昭和20~30年代

夏、湖のある高原。避暑にやってくるというライフスタイルはもちろん、少女のファッションそのものも読者たちの憧れと夢を誘ったことでしょう。

《みずうみのほとり》

鏑木清方(1878-1972)

江戸、明治の風俗を情緒豊かに描いた画家で、大正美人画の巨匠と称されます。本の装丁や新聞の挿絵も多く手がけました。

《茶屋娘》肉筆画
日本髪に鉢巻き(お三輪巻)をした少女。お茶屋の下働きをしているのでしょうか、ほっと一息ついている様子が詩情豊かに描かれています。

《港屋絵草紙店》

橋口五葉(1880-1921)

東京美術学校西洋画科で洋画を学んだ画家ですが、後に浮世絵の研究を始め、伝統的な技法による版画制作を行いました。

《化粧》木版画 大正7年
江戸の浮世絵に現れる類型化した女性像とは異なり、この時代のいわゆる「新版画」は、モデルの個性をつかんだ表現となっています。伏し目の表情からもモデルの心情が伝わってくるようです。

《化粧》

小早川清(1899-1948)

鏑木清方に学び美人画を得意とした画家です。昭和の初め頃に木版画を集中的に制作しました。

《近代時世粧ノ内 一 ほろ酔ひ》
木版画 昭和5年

当時、街頭に登場したモダンガール(モガ)です。断髪、洋装、洋酒にシガレットという新しい風俗を描く昭和版の浮世絵です。

《近代時世粧ノ内 一 ほろ酔ひ》

伊東深水(1898-1972)

鏑木清方に学び、最後の浮世絵系美人画家と称され、当時の女性風俗を描いた画家です。橋口五葉とともに「新版画」の運動を推し進めました。

《新美人十二姿 おしろい》
木版画 大正12年

大きな瞳と濃い眉、モデルの個性的な表情がしっかりと表現されています。彼女の心情までもが伺えるようです。

《新美人十二姿 おしろい》

山村耕花(1885-1942)

風俗人物画を得意とした日本画家で、版画や舞台美術の仕事も手がけました。

《踊り》木版画 大正13年
ダンスに興じているモダンガール。背中を大きく見せた大胆なドレス、羽根飾りのついた帽子、孔雀の羽のような扇、真珠のネックレス…。まるで外国のモード雑誌そのままのようなモダンなファッションです。

《踊り》

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