山口県立美術館|山口県山口市

『SELF AND OTHERS』(1977)より

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牛腸 茂雄
《『SELF AND OTHERS』(1977)より》

  • ca. 1976-77(昭和51-52年頃)
  • ゼラチン・シルヴァー・プリント
画像:『SELF AND OTHERS』(1977)より

よく似た顔立ちにおそろいの髪形と服装をした、双子の少女。井の頭公園の大きな木の前で、互いの手を握って立っています。家族の記念写真のような何気ない設定ですが、不審気な二人の表情、やや強張った様子は、撮影者とモデルの間の心理的な距離をうかがわせます。
『SELF AND OTHERS』は、牛腸の家族、友人、知人、近所の子供など、彼と関わった人々を写した60点の写真によって構成された写真集です。牛腸は、自身の生における多様な関係性を収めた写真を通じて、相互に影響しあう「自己」と「他者」の複雑な関係性を追求したのでした。この1枚においては、撮影者とモデル、双子、画面右奥のベンチでくつろぐカップルの間に、それぞれ異なる「自己」と「他者」の関係を読み取ることができます。同時に、この写真を見て双子に見返されるとき、私たちもまた、「他者」に見られることで「自己」の存在を再認識していることに気づくのではないでしょうか。

作家プロフィール

牛腸 茂雄【ごちょう しげお】

生没年 1946~1983(昭和21年~昭和58年)

新潟県加茂市出身。幼少期(3歳)に胸椎カリエスを患い、身体に大きな後遺症を抱えていました。桑沢デザイン研究所で大辻清司に才能を見出されたことで写真を本格的に学ぶようになり、数々の作品を残しますが、なかでも写真集『SELF AND OTHERS』は日本写真協会新人賞を受賞。死後再評価の機運が高まり、1994年には『SELF AND OTHERS』(未来社)が再刊、2000年には同作品を題材にした映画も製作・公開されました。

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