山口県立美術館|山口県山口市

猫になった女

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桂 ゆき
《猫になった女》

  • 1950(昭和25)年
  • 油彩/カンヴァス
画像:猫になった女

胸の前の、印を結ぶような手指のかたちが印象的な、女性の上半身像。しかし首から上は毛の生えた猫の頭部が描かれています。このような日常から切り離された意外な組み合わせの表現は、シュルレアリスムの手法として、デペイズマンと呼ばれています。 グレーのバックに生々しく描かれた女性の身体の後ろには白い布が配され、腰から下は黒い布に覆われています。しかし猫の頭と首の後ろには赤い布が大きなリボンのように広がって、頭上の背景の色も赤みを帯びており、明らかに女性の上半身とは異なる次元の表現がなされています。首から上だけを見れば、まるで童話に登場するキャラクターのようにも見えますが、首から下だけに注目すると、実在する貴婦人の肖像のようにも見えてきます。女性と猫、現実と童話という異なるふたつの世界が合成された不思議な表現です。

作家プロフィール

桂 ゆき【かつら ゆき】

生没年 1913~2004(大正2年~平成16年)

東京、本郷千駄木(現・東京都文京区)に生まれました。本名は雪子。府立第五高等女学校卒業後、中村研一に油絵を学び、光風会、二科展に出品しています。1956年から61年まで、フランス、アメリカに滞在し現代美術家と交流しました。早くからコラージュ技法を用いて斬新な表現を目指すなど、日本における女性芸術家のパイオニア的存在でした。

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