山口県立美術館|山口県山口市

北へ西へ(シベリア・シリーズ)

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香月 泰男
《北へ西へ(シベリア・シリーズ)》

  • 1959(昭和34)年
  • 油彩/カンヴァス
画像:北へ西へ(シベリア・シリーズ)

窓の鉄格子をしっかりと握り、画面のこちら側を見つめる人の群れ。一つひとつの顔には、個性と呼べるほどの違いが見られません。目が落ちくぼみ、頬がこけた顔は、いいようのない不安を抱えています。彼らは太平洋戦争で戦った日本軍の兵士たち。大陸で終戦を迎えた直後、ソ連兵によって武装解除され、行方を告げられぬまま貨車に詰め込まれます。この絵の作者、香月泰男もその中のひとりでした。
香月は、一人ひとりの個人ではなく、軍隊という組織の中で個性を奪われ、画一的な「兵隊」という存在にならざるを得なかった人々の顔を描いています。この時、香月たちには、帰国できるかもしれないという一縷の望みがありました。北上を続ける列車の行きつく先、日本海に面した港から帰れるかもしれない・・・。しかし、ある日、列車の後方から朝日が昇ってくるのを見たとき、その望みは絶たれました。列車は東へ、すなわちシベリアへと向かっていたのです。

作家プロフィール

香月 泰男【かづき やすお】

生没年 1911~1974(明治44年~昭和49年)

山口県大津郡三隅村(現・長門市三隅)に生まれた香月泰男は、東京美術学校で油彩画を学びました。卒業後は美術教員の傍ら国画会を中心に作品を発表します。1943年から太平洋戦争に従軍。戦後は1947年までシベリアに抑留されました。1967年、従軍と抑留の経験を描いた「シベリア・シリーズ」により、第一回日本芸術大賞を受賞。1974年に急逝するまで描き継がれた同シリーズは今日も多くの人々を惹きつけています。

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