山口県立美術館|山口県山口市

バラ

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松田正平
《バラ》

  • 1978(昭和53)年
  • 油彩/カンヴァス
画像:バラ

松田正平は太平洋戦争終結間際、故郷の山口県宇部市で炭鉱夫として働いていました。戦況の悪化と、画家としての自らの先行きにも不安を抱えていたであろうこの頃、炭鉱までの行き帰りの途中に、偶然、野バラを目にします。それは「とりたてて目を引くような特殊なバラではなかった」と述懐していますが、この世からすべての花が絶えてしまったかのような戦争の只中で、道端に咲く名もなきバラの可憐な姿は、画家の心に鮮烈な印象を残しました。以来、およそ半世紀にわたって、画家はバラを描きつづけます。
「バラを描かせては梅原龍三郎、小島善三郎と並ぶ名手」とも言われる松田正平。そんな松田が描くのは、自ら手塩にかけて育てたバラでした。薄い絵具を何層も重ねて描き出された繊細な青色をバックに色とりどりの表情を見せるバラの花。その愛らしい姿には、バラの美しさを見初めた、若かりし頃の新鮮な感動が映し出されているようです。

作家プロフィール

松田 正平【まつだ しょうへい】

生没年 1913~2004(大正2年~平成16年)

島根県鹿足郡青原村(現・津和野町)出身。4歳の頃、山口県厚狭郡宇部村(現・宇部市)の松田家の養子となります(旧姓:久保田)。東京美術学校で油彩画を学び、同校卒業後、パリに留学。帰国後は国画会を中心に作品を発表しました。還暦を過ぎた頃から独特の油彩画が注目を集め始め、1984年に第16回日本芸術大賞を受賞。絵具を薄く塗り重ねた透明感のある表現と自在な線描は、繊細で温かみのある詩情を湛えています。

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