山口県立美術館|山口県山口市

凍る土

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宮崎 進
《凍る土》

  • 1985-86(昭和60‐61)年
  • 油彩/板
画像:凍る土

青みがかった灰色と茶色が混ざった広い色面。そこを薄い黒の線がいくつかの部分に分割しています。草や木、動物など具体的なものは何一つ見当たりません。その抽象性がかえって、凍り付いた太地だけでなく、その上に漂う鋭く冷たい空気や、そこに降り注ぐ白々とした淡い光など、極寒の地全体の環境を見る者に強く印象づけるようです。そんな寒色だけの構成のなかで、画面左上に見えるわずかなオレンジ色の帯は、小さな温かい命の存在を暗示しているようで、見る者の目を引き付けて離しません。 80年代に入ってから宮崎の作品は抽象性をおびてきます。風景や人物や静物を描いたものでも、まるで透明なセロファンの断片が重なり合ったような、淡い光を感じさせるものが少なくありません。これには旧小郡駅(現・新山口駅)に1980年に設置されたステンドグラス制作のための仕事の影響があるといわれています。

作家プロフィール

宮崎 進【みやざ しん(本名すすむ)】

生没年 1922~2018(大正11年~平成30年)

山口県徳山市に生まれ、日本美術学校卒業し、応召。戦後4年間のシベリア抑留を経て、帰国後は光風会、日展で活躍します。1967年に第10回安井賞を受賞し、具象作家の地位を確立しました。その後渡欧、1981年に多摩美術大学教授に就任。作風は80年代から抽象性を帯びていき、90年代以降は麻布を貼り付けた大画面に直接描く作品を手掛けました。

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